研究者IDマスターファイルの作成

研究者の様々な固有情報を連携し、各種評価や研究力分析に効果的に活用

導入の背景・経緯

 研究者IDマスターファイルは、東北大ID、e-rad研究者番号、ORCID、ResearcherID、Scopus Author ID、researchmapリンク識別子といった学内システムのIDおよび、学外システムのIDを紐づけたファイルで、2019年6月21日に導入しました。
 世界に伍する研究大学の実現においては例えば、FWCI、Top10%論文等の論文指標をはじめとする、教員の各種アクティビティーを詳細に把握、分析できるようにすることが重要です。論文指標データの収集に当たってはこれまで、外部のデータベースを利用していましたが、各論文が、東北大学のどの教員によるものか、かつその教員の属性情報が何か(例:所属、職位、性別、年齢等)、という情報が含まれないため、把握が困難でした。

 研究者IDマスターファイルは、学内システムのIDと、学外IDシステムのIDを紐づけたファイルであるため、教員の属性情報を含む人事データ(学内システム)と、論文指標を含む論文データ(学外システム)の橋渡しが可能です。これにより、どの部局のどの教員が、どのような論文を執筆し、その指標はどのくらいか、といった一連の情報が得られるようになりました。

研究者IDマスターファイルの仕組み

 研究者IDマスターファイルは、東北大学において既に導入されているGoogle Workspaceの基盤上で運用しています。ファイル自体はGoogleスプレッドシートで、東北大ID、e-rad研究者番号、ORCID、ResearcherID、Scopus Author ID、researchmapリンク識別子といった学内システムのIDおよび、学外システムのIDが入力されています。
 教員個人は、それらの情報をWeb上で確認、更新を随時行うことができ、更新情報はGoogleスプレッドシートに即時反映されます。尚、東北大学に新しく採用となった教員へは、当該Web上で研究者IDマスターファイルの確認、更新を依頼するメールが自動で送信され、大学全体として各種ID情報を取得できる環境を整えています。

これまでの活用例

 本学の重要な経営指標を組織ごとに分析する「経営戦略データベース」と、研究者個人ごとのパフォーマンスを見える化する「研究者情報データベース」は、エビデンスデータを活用した評価に基づく戦略的な資源配分を実現し、組織と個人のパフォーマンス向上の促進に貢献します。

経営戦略データベース

 東北大学では、人事、財務、学務等学内にある業務システム、学外のシステムデータを集約した経営戦略データベースを2020年3月31日より運用しています。経営戦略データベース上で、人事データ、研究者IDマスターファイル、Scopusデータを紐づけることで、FWCI、Top10%論文数、国際共著論文数等の各種論文指標に関する情報を部局別に整理しました。これらのデータを、執行部と部局とのディスカッションペーパーや、学内での評価、分析、学外への報告資料作成等に活用しています。

研究者情報データベース

 東北大学では、研究者の多様な業績を効率的に集積し、エビデンスベースで評価・分析するシステムとして、研究者情報データベースを運用しています。これは、学外の論文情報データベースと、学内に蓄積された人事・研究費・教育実績等の多種多様なフォーマットのデータを集約し、瞬時に評価・分析・可視化が可能なシステムであり、教員が入力しなくても実績が自動的に集積される仕組みです。これらの情報の収集に当たっても、この研究者IDマスターファイルを活用しています。研究者IDマスターファイルのScopus Author ID、およびresearchmapリンク識別子を元に、API連携によって、研究者情報データベースにこれらの外部データベースに登載された業績情報が自動で蓄積されます。蓄積された情報は、学外向けWeb上で研究者紹介として教員の広報の他、学内向けWeb上において、教員個人、部局担当者が自身の、自部局のアクティビティー把握、各種業績の集計、分析等、様々な場面で利用されています。

今後の展望

 研究者IDマスターファイルは、これまで個別に存在していた研究者に関するさまざまなデータを統合する重要な役割を果たしています。2024年度から、このファイルはオープンサイエンスの推進にも活用される予定です。オープンサイエンスとは、論文のオープンアクセスや研究データのオープン化・共有化(オープンデータ)を含むもので、研究成果の共有・公開を促進し、研究活動の加速や新たな知識の創造を促す取り組みです。

 研究者IDマスターファイルは、研究成果や機関リポジトリ、データカタログなどを一連のデータとして結びつける役割を果たし、それらの高度化を目指します。この統合によって、研究者間のコラボレーションが促進され、研究の質や効率が向上することが期待されています。また、研究データの透明性が高まることで、再現性のある信頼性の高い研究が推進されることも期待されています。