経営戦略データベースの導入

学内外データの集約・統合・見える化によりデータ活用による大学経営の高度化を強力に推進



概要

 経営戦略データベースは、東北大学ビジョン2030や、指定国立大学法人構想などの着実な実現に向けた経営戦略策定に資するため、本学が有する教育、研究、管理運営などの多様な情報や、Scopus、Web of Science などの研究業績に関する外部データを連携・統合し、あらゆるIR 情報の見える化を実現するものです。
 学内外のデータを集約・統合するデータベースと、可視化のためのBIツールであるTableauによって構成され、第3期の中期目標・中期計画の期間中における業績管理評価のための重要な指標(以下、KPIという)などをリアルタイムでモニタリングすることができます。

導入の背景

 これまで、KPIの進捗管理にあたっては、本部の各部・課が各々、各システムから抽出したデータやエクセル等を元に、手作業で集計し、グラフ化するという作業を行っていました。また、KPIの内容によっては、部署の所掌を超えた内容もあります。例えば、「本学との交流者数を第3期中期目標期間比で2倍に増加させる」というKPIの場合、基金・校友事業室、総務課、国際企画課がそれぞれ管理するデータを取りまとめる必要があります。このようなアナログな手法では、所掌間でのデータのやり取りが発生するため数値の確定までに相当の時間を要すため、結果的にリアルタイムな進捗状況をモニタリングすることは不可能です。
 KPIの進捗管理をリアルタイム性をもって実現するためには、これらの諸課題をクリアする必要がありました。

プロジェクト・チームの結成

 構築に際し、「経営戦略データベース構築プロジェクト・チーム」を2019年12月に結成しました。プロボストである青木理事・副学長のもとに、人事企画部、財務部、研究推進部、教育・学生支援部等、基幹業務システムを所管し、かつKPIの算出を担当する本部事務機構の各部から、実務を担当する若手のメンバーが集まりました。

プロジェクト・チームの活動内容

 経営戦略データベースの構築にあたり、まず初めに、それまで各所掌で個別に管理されていたそれぞれのKPIを、漏れなく重複なく、全学的に適正に管理していくために、どういった根拠で算出されているのかを明らかにし、それらをメンバー間で共有する必要がありました。  
 そのため、メンバー間で議論を重ね、上記のようなKPI管理表を作成しました。 これは、本学を取り巻く各種KPIのデータソースが何で、これまでどのように算出してきたのかを表として整理したものです。 例として、「とある制度を適用している教員の比率」が指標としてあるとします。定義に、率を構成する分母は本学の全教員数、分子は制度を適用している教員数、担当の部課が人事企画部で、データソースは分母が人事給与統合システム、分子がエクセルデータ、算出に当たっては、これらの二つのデータソースから手作業で適用率を算出している、ということを記入し、これまで各部署で管理されていた、指標算出にあたって必要な一連の情報をKPI管理表にまとめ、一元化することから始めました。

 次に、これまでの運用を見直し、経営戦略データベースを利用してどうすればより効率的な運用が可能となるか、メンバーで議論を重ねました。例えば、これまでエクセルデータで管理していた分子のとある制度を適用している教員の情報は、人事給与統合システムで管理できることが分かったので、今後はそのような運用にすることとし、人事給与統合システムから抽出したデータを経営戦略データベースに投入するのみで、Tableauを用いて効率的に適用率を算出できるようにしました。  
 制度を適用する対象教員をエクセルデータから人事給与統合システム上での管理へシフトし、データソースを一元化させたことがポイントです。このようなプロセスを経て得られた検討結果に沿って、経営戦略データベースにデータを投入し、Tableauによる見える化を行う、という流れで、各種KPIの見える化を進めました。

これまでの成果

「データで見る東北大学」

 学外向けとしてTableau Publicも活用しております。予め個人情報を覗いた形のデータを使用し、Tableau Desktopで見える化。学外向けを意識し、本学に関連する写真を背景に、見える化したデータをTableau Publicに展開。  
 本学のDXの取組みを発信するWebサイトである東北大学DXナビゲーションに、「データで見る東北大学」のページを2021年11月に開設し、Tableau Publicの見える化データを埋め込みました。対入学希望者には学務関連のデータを、対入職希望者には職員関連の情報を、対企業、一般の方向けには寄付金額、敷地面積等の数値データを見せつつ、学外にアピールも行っています。

「東北大学ダッシュボード」

 2020年10月に稼働した東北大学ダッシュボードは、第4期中期目標・中期計画、指定国構想調書のKPIといった、本学を取り巻く各種KPIをリアルタイムで見える化したものです。Tableau Serverに格納した見える化データを、学内限定Webサイトに埋め込むことで、本学の教職員が閲覧できます。  
 KPIによっては、部局ごとにフィルタできるチェックボックスがあり、閲覧者は、このチェックボックスを操作して、自部局の状況を確認することができます。各部局では、このWebサイトを活用することにより、時部局の現状をより効率的に把握し、今後の運営方針を検討する上で役立てることができるようになりました。

課題

 プロジェクトを進めていくと、基幹業務システムのデータ活用に課題があることが少しずつわかってきました。例えば、ある項目はKPIの算出に影響するものだが、必須入力になっていないため、データの穴埋めが必要であったり、またある項目は入力の内容に統一感がなく、修正が必要であったりしました。これは、「基幹業務システムは元々、各部署の業務遂行のためのものであり、例えば人事給与統合システムは人事発令および給与計算のため、学務情報システムは学籍管理のためのものであり、それに必要となるデータを入力することが目的であるからです。
 データ活用による大学経営の高度化を進めるためには、基幹業務システムを、『個別の業務システム』としてだけ見るのではなく、『「データを活用できる状態」にデジタル化すること』という意識の組織的な共有と、実践が必要となるでしょう。

今後の展望

 経営戦略データベースは、学内外のデータを集約・統合し、"東北大学の今を見える化"してきました。これからは、AI等の最新技術を活用することで、"今あるデータから未来を予測する"という、シミュレーションを実現したいと考えています。
 本学は、大学の諸活動のさらなる発展のために、データとデジタル技術の活用を推進していきます。