Salesforceを活用した学生対応
現状と課題
普段の学生対応は、事務局窓口での面談、電話応対、メールやチャットでのやりとりなど様々な方法で行っています。対応時に学生の情報を確認する際には、学務管理システムを開いて必要な情報を探したり、紙で保管されている学生記録のバインダーから探したり、先輩職員に聞いたりと、手間が増えるだけでなく学生を待たせることが多くありました。
学生対応後の共有については、電話メモやメールをもとに電話処理箋を作成し、紙の様式を回覧していました。回覧後は、個人で保管するか、あるいは学内の共有フォルダのどこかに保管するという流れとなり、その場の情報共有かつ事務処理にとどまり、今後の学生対応に繋げることができていませんでした。
目的
デジタル技術を効果的に活用し、サービス品質を確保しつつ向上させ、学生対応を省人化および効率化することで、以下のような目的の達成を目指しました。
- 学生を待たせることなく、迅速かつ学生ひとりひとりに合った対応をする。
- 職員の業務負荷を減らし、学生対応や個々人の事務分掌業務のみならず、課・グループ内等のこと(+α)に目を向けることで、さらなるサービス向上を図る。
主な取り組み
1.入学前学生情報収集フォームの作成
入学手続きの際、従来は紙様式の「学生記録」を手書きで提出させ、学生証の発行には、顔写真用の台紙に貼付された顔写真をOCRスキャンしたデータを使用していました。このような運用を続けていると、以下のような課題が挙げられます。
課題
- 学生数分の学生記録を手書き文字から目視で読み取り、学務管理システムに手入力するため膨大な労力がかかる
- 手書きによる表記ゆれや読み取り困難さのために正確な情報を取り込めない場合がある
- 貼付された顔写真データを読み取る手間がかかり、また読み取りの精度にばらつきが生じる
- 学生は「学生記録」とは別に顔写真を用意する必要がある
そこで、以上の課題を解消できるよう以下の対策を行いました。
対策
- 学生証に使用する写真及び必要情報を収集するフォームの作成
- 学務管理システム取り込みに必要な情報かつ紙の「学生記録」の項目を入力させるフォームの作成(Microsoft Formsを使用)
→学生証に必要な情報とマージできるよう受験番号の入力を必須にする - LMSを活用し、以上2つのフォームや入学前に必要な事務連絡を掲載するポータルサイトを作成
→ポータルサイトのログインに必要な情報は入学手続き書類に同封して郵送
以上の対策により、年度末の忙しい時期に目視で転記することも顔写真のスキャン等といった業務で時間を取られることなく、新年度を迎える前には入学生全員分の学生証発行ができ、学務管理システムへの登録を済ませて履修登録の準備を進めることができました。
ただし、この対策により新年度に向けた段取りはスムーズになりましたが、せっかく集めた学生に関する情報を入学後の学生対応へ効果的に活用し、学生サービスに還元していく必要があります。
2.学生に関する情報をSalesforceに集約
これまで集めた学生の情報は、学務管理システムの学生カルテや履修状況、成績や学籍の情報等メニューごとに開いて確認する必要がありました。また、紙の「学生記録」の内容を全て網羅しているわけではないため、バインダーから探して参照したり他に必要な情報は共有フォルダからExcelファイル等を探して閲覧したりしていました。
そこで、これらの課題を解消できるよう、以下の情報をSalesforce*に集約しました。
*Salesforce:株式会社セールスフォース・ジャパンが提供する、クラウドベースの顧客関係管理(CRM)ソフトウェア
学務管理システムから書き出した情報
- 個人情報(現状、顔写真除く)
- 学籍異動履歴
- 保証人、家族の情報
- 履修、成績(科目別・GPA)
- 学納金区分
その他手段により収集した情報
- 奨学金貸与、給付状況
- GPS-Academic(ベネッセ)受験結果
- 学事出席履歴
- SA登録状況
- ゼミ教員情報
- 学類配属希望調査
以上の情報を1画面で対象の学生ごとに閲覧可能にしたことで、学務管理システムをメニューごとに開いて確認したり、紙の「学生記録」などを閲覧したりする必要がなくなりました。
また、以下のように運用することで、個人情報を厳重かつ確実に管理し、情報セキュリティ対策を徹底しています。
- アクセス権限を教務、学生支援関係職員に限定
- その中でも管理者権限とユーザー権限を分けて運用する
- スマートフォンアプリを使用した多要素認証を行うことで不正アクセスを防止する
3.学生対応記録の集約を可能に
これまでは学生対応後の共有方法として、電話の場合は処理箋を作成して回議、メールや対面の場合は、メールの転送や口頭共有で済ませ、その場限りの共有に過ぎませんでした。
そこで、これらの課題を解消できるよう、Salesforceの機能を以下のように活用しました。
対策
- 活動記録を事実のみ簡潔に記録可能に
- @等メンション機能で即時共有、Salesforce内での即時通知
- 学生の個人情報からタブの切り替えで対応履歴を閲覧可
→学生情報と対応履歴がリンクしているのが大きなポイント
以上により、学生対応前の情報収集を容易にし、学生を待たせることなく、適切な対応を可能にしました。
また、Salesforce内にメモ書きのようなスタイルで容易に記載ができるので、共有用の資料作成の手間だけでなく、都度ベテラン職員に聞いたり共有フォルダ等から対象のファイルを探す手間を削減できました。
4.全学での操作説明会の実施
2024年9月に2回、教務、学生支援、キャリア関係職員を対象に、操作説明会を対面で実施しました。画面構築にご協力いただいた業者の方を交えて、業務内での効果的な活用に向けたアドバイスをいただきました。
5.Salesforce関係ポータルサイトの展開
業務が属人化したり、人事異動があった際に使用、管理できなくなったりすることがないよう、ポータルサイトにてマニュアル等を集約し、Microsoft Teamsのチャネル内にてブレストや意見交換ができる場を作成し、データ取り込み前の不安の解消や改善要望等を吸い上げられるようにしました。
Salesforce稼働による効果と今後の展望
2024年9月の展開から1ヶ月が経過した時点では、対象職員20人のうち10人程度と、おおよそ5割の職員が活用している状況でした。一定の成果は見られますが、さらなる業務への浸透が課題となっています。今後は、より多くの職員が効果的にシステムを活用できるような仕組みづくりを展開していきます。