ノーコードで実現するセミナー運営効率化
研究・教育現場におけるノーコードツールの活用
導入の経緯
東北大学工学研究科機械系では、博士課程前期の学生が自身の研究進捗を振り返りながら、分野外の人にもわかりやすく伝えるコミュニケーション能力を養う場として、「分野横断セミナー」を実施しています。セミナーはポスター発表形式で行われ、学生同士が発表や質問を通じて交流を深めることを目的としています。従来、このセミナーの出席管理には独自のウェブアプリケーションを使用していましたが、機能が不十分である点や事前準備の煩雑さといった課題がありました。
そこで、必要な機能の追加とともに、その他の工程も含めた事務作業時間の削減を図り、教育・指導へのリソースを集中できる環境を整えるため、ノーコードツールの導入を検討いたしました。
課題の特定と解決方法
本セミナーは、出席管理と実施効果の向上を目的として、以下の流れで行われています。
セミナーの流れ
<事前準備>
①事務担当者が発表者情報を登録
②発表者が発表タイトルと前刷りを提出
<セミナー当日>
③質問者が質問内容を登録(=出席管理)
④発表者が質問者を登録(=③のエビデンス)
⑤セッションチェアが発表者に対する評価・コメントを登録
<セミナー後>
⑥発表者が質問内容を閲覧(今後の研究に活用)
⑦指導教員が質問内容を確認し、出席を登録
従来、これらのプロセスのうち①~⑥では独自のウェブアプリケーションを使用していましたが、①の発表者情報登録において、Excelからの手動入力作業が煩雑でした。また、その他の工程においても紙や別システムを使用する場面があり、データ一元管理が不十分であるという課題がありました。
これらの課題を解決するため、ノーコードツール「AppSheet」を用いて新たにアプリを作成し、導入することとしました。AppSheetの選定理由は以下の2点です。
- 東北大学の教職員・学生はGoogle Workspaceアカウントを所有しており、ログイン管理が容易に実装できること
- スプレッドシートをデータベースとして活用できるため、①の手動入力作業が不要になること
アプリ導入による改善効果
AppSheetアプリの導入により、各工程において以下のような効果が得られました。
アプリ導入による効果
<事前準備>
①スプレッドシートで直接情報を管理できるようになり、事前準備や出席確認における事務作業の時間が大幅に短縮された。
②アプリ上で前刷りの登録を行うことで、発表者情報との紐付けや共有がスムーズに行えるようになった。
<セミナー当日>
③〜⑤の各登録作業にQRコードを導入したことで、会場での登録作業がよりスムーズになった。
アプリ上で発表内容や会場マップを確認できるようになり、会場での活動が円滑に進むようになった。
<セミナー後>
⑦指導教員が出席確認・登録の進行状況をアプリ上で把握でき、必要に応じて適切なフォローが行えるようになった。
これらの改善により、事務担当者の作業時間を削減するとともに、参加学生がコミュニケーションに集中できる環境を整備しました。また、教員による教育・指導時間の確保にも繋げることができました。
今後の展望
多様な教育プログラムの現場では様々なツールの活用が求められますが、ノーコードツールによって迅速かつフレキシブルな開発が可能となり、個別のケースにも対応しやすくなりました。今回のような研究発表形式のイベントは学内でも多く開催されているため、今回の事例やアプリの仕様を共有し、活用の幅を広げてまいります。